マイクロサットユニット

       

マイクロサットユニットは,超小型衛星や超小型宇宙機を題材として,要素技術開発に留まらず,実機開発や実機への実装までを行うことを目標にします.超小型に留まらず,衛星や惑星探査機は,ミッション系,電源系,姿勢制御系,熱制御系,構造系,通信系,コマンド&データ処理系などのサブシステムで構成されます.複数のサブシステムを経験する,システム全体を担当することで,複雑な工学システム全体を見渡しながら研究開発を牽引する工学リーダーを育成します.

プロジェクト

①超小型深宇宙探査用キックモータ研究開発 (小型宇宙推進ユニットと共同)
・北大−JAXA共同で研究開発
・2020年度対外発表: 海外講演1件(修士院生)[1]、国内講演1件(修士院生)[2]

参考文献
[1] Tabata, K., Totani, T., Matsushima, K., and Nagata, H., “Thermal Design of Upper Boost Stage with Hybrid Kick Motor for Microspacecraft”, Proceedings of 2020 International Conference on Environmental Systems, ICES-2020-342, 2020.
[2] 田端健一,友永優太,戸谷剛,永田晴紀,“ハイブリッドキックモータを搭載した超小型宇宙機の熱設計”, 第64回宇宙科学技術連合講演会,3L12, オンライン,2020.


②小型SAR衛星のシステム熱解析・熱設計
・衛星開発ベンチャー企業((株)QPS研究所)との共同研究。設計解析した衛星はフライト済み
・合成開口レーダー(SAR)を搭載する小型衛星「イザナギ」は、分解能1mの100kg級小型SAR衛星であり、従来の1/20の質量と、1/100のコストを実現する。SAR衛星は稼働時約600Wの発熱を伴うため、熱設計が重要となる。
・卒業論文1件(学部生)[3]

参考文献
[3] 青井柾樹,“合成開口レーダーを有する小型衛星「イザナギ」における軌道上温度履歴と解析モデルの評価”, 2020年度卒業論文,北海道大学,2021.


③Al-Cu-Alクラッド材を用いた超小型衛星の設計に関する研究
・軽金属メーカー(日本軽金属(株))との共同研究
・2020年度対外発表: 海外講演1件(修士院生)[4]、国内講演1件(修士院生)[5]

参考文献
[4] Ota, H., Yoshii, K., and Totani, T., “Applying the Thermal Design Method Based on Overall Heat Capacity to Microsatellites”, Proceedings of 2020 International Conference on Environmental Systems, ICES-2020-292, 2020.
[5] 太田創,吉井慧,戸谷剛,“超⼩型衛星全体の熱容量を⽤いる熱設計⽅針の適⽤範囲拡⼤に関する検証”, 第64回宇宙科学技術連合講演会,3L17, オンライン,2020.


④アジア諸国向け超小型地球観測衛星開発
北海道大学に組織された「宇宙ミッションセンター」には、衛星や探査機の観測データを用いて研究を行っている理学・農学・水産学などのフィールドサイエンスの研究者や、衛星・探査機・ロケットの研究を行っている工学系の研究者が所属しています。
これまでに、数々の50kg級超小型人工衛星(RISING-2, UNIFORM-1, DIWATA-1, DIWATA-2, RISESAT, MicroDragon, Lawkanat-1)および国際宇宙ステーション日本実験モジュール暴露部に搭載する観測機器(GLIMS)を、国内外の機関と連携して開発した実績があります。
今後も新たな衛星開発プロジェクトが期待され、f3工学教育研究センターとの連携を強めて実施します。
参考 北海道大学創成研究機構 宇宙ミッションセンター

北海道大学は東北大学と衛星開発および衛星運用において、強い連携を維持しています。
2009年に運用開始した本チーム初の超小型衛星RISING(SPRITE-SAT)以降、2021年運用開始の最新衛星まで、設計・組立・試験・運用の多岐にわたる技術と経験を蓄積してきました。
2017年3月にはJAXA・東北大学・北海道大学の3者により、包括的な連携協力協定を締結しました。

また、北海道大学が中心となり、2016年11月に発足したアジア・マイクロサテライト・コンソーシアム(AMC)には、日本を含むアジア諸国9カ国の大学や宇宙機関など16機関が参加し、現在においても共同研究やキャパシティビルディングなど、強固な関係を拡大しています。

衛星運用においては、北海道大学と東北大学の連携により、
①東北大学所属仙台局、
②北海道大学所属函館局、
③北海道大学所属スウェーデン・キルナ局
の3局を活用して、超小型衛星の日々の運用を行っています。
また、フィリピン国イロイロ市郊外に設置した新しい地上局も稼働準備中であり、国産地上局システムの輸出と設置に、大きく貢献しています。

衛星試験においては、道内の試験環境に限定せず、国内の多くの機関について利用経験があります。必要とする性能、および施設のスケジュールに合わせて、最適な場所で迅速に試験を実施するノウハウを有しています。
・宮城県産業技術総合センター (仙台市) [振動試験]
・福島ロボットテストフィールド (福島県南相馬市) [振動試験]
・帝京大学宇都宮キャンパス [熱真空試験]
・九州工業大学 超小型衛星試験センター [振動試験, 熱真空試験]


⑤超小型人工衛星「ひろがり」の開発 (室蘭工業大学)
室蘭工業大学は,大阪府立大学と共同で2U(10cm×10cm×20cm)サイズの超小型人工衛星「ひろがり」を開発しました.大阪府立大学が「ひろがり」のバス部を、室蘭工業大学がミッション部の開発を担当しました.この衛星の主なミッションは以下の二つです(どちらも世界初の試み).
1.厚みのある平板を隙間なく折りたたみ、2方向に同期展開可能な二次元展開板構造を軌道上で展開すること
2.格子投影法を応用した光学的形状計測手法により、二次元展開板構造の展開形状を軌道上で計測すること

宇宙太陽光発電システムやフェーズドアレイアンテナ衛星では,1辺の長さが数十メートルから数キロメートル級の大型平面構造が必要です.これらの実現には,宇宙空間における超大型構造物の構築方法が大きな開発要素となっており,展開・収納構造と保守・運用を含めた継続性のある構築方法の技術開発が重要となっています.

展開収納構造の考案には日本の伝統的技術とされる折り紙工学が有効ですが,太陽光発電パネルやフェーズドアレイアンテナには厚みがあり,板厚を無視した従来の折り紙工学の応用では成立が困難です.超小型衛星「ひろがり」は,折り紙工学におけるミウラ折りに板厚の存在を考慮することによって二次元展開板構造を効率よく収納して宇宙に運搬し,軌道上で平板構造を構築する方法を宇宙実証するものです.

2021年2月に米国の民間ロケットによりシグナス宇宙船とともに国際宇宙ステーション(ISS)に向けて輸送されました.ISSに滞在する野口聡一宇宙飛行士の支援により、2021年3月にISS日本実験棟「きぼう」から宇宙空間へ放出され,衛星搭載カメラによってパドル展開および二次元展開板構造の展開の成功が確認されました.

ひろがり関連リンク
https://readyfor.jp/projects/muroran-hirogari
室蘭工業大学 宇宙機構造工学研究室

実験施設

【札幌キャンパス】
①スペースチャンバー
・型式: 株式会社菅製作所 φ1 mスペースチャンバー
株式会社菅製作所ホームページ


②熱サイクル試験装置
・型式: Thermotron S-8-8200
セブンシーズ株式会社ホームページ


③太陽光吸収率測定装置
・型式: 株式会社興栄PM-A2
株式会社興栄ホームページ


④赤外放射率測定装置
・型式: Thermo Fisher Scientific Nicolet iS50 FT-IR
・株式会社システムズエンジニアリング積分球(特注)


⑤熱伝導率測定装置
・型式: 京都電子工業株式会社ホットディスク法熱物性測定装置 TPS 500S
京都電子工業株式会社ホームページ
⑥比熱測定装置
・型式: メトラー・トレド株式会社 示差走査熱量計DSC 1
メトラー・トレド株式会社ホームページ


【外部機関】
①振動試験装置
北海道立総合研究機構工業試験場


②電子機器用衝撃試験装置
北海道立総合研究機構工業試験場

 

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